朝6時起床。朝食は6時半からと聞いていたので、食事の場所と聞いていた部屋に行ってみた。そこは大きな座敷で、宿のバアチャンが床の間に花を生けていた。立派な床の間だ。ついでにその宿の奥の間を案内してもらった。今回泊まった旅館・松屋は昔からの有名な宿だったのだ。江戸時代から続く文化財的な宿で、明治からの文人墨客、政治家などの書も残っているらしい。
座敷の柱、梁、欄間なんぞもしっかり手入れされ、大洲の臥龍山荘にも負けないほどだ。バアチャンが言うには、その座敷での宿泊も可能だとか。料金は1万5千円程度、料理も変わりなかなか良さそうだ。機会があれば泊まってみたい。
そこで聞いた話だけど、卯之町はチョイと前まではこの地方の中心だったらしい。江戸時代末期は松山、宇和島より栄え、当然、大洲、内子より大きな街だった。JR予讃線も卯之町が終点。高野長英の隠れ住んだところも卯之町に保存されている。そんな話を聞きつつ、大きな座敷でのんびりとる朝食はとても満ち足りたものだった。
バアチャンに明石寺までの道を聞く。43番明石寺はこれから進む方向とは反対側、42番佛木寺方向にチョイと戻ったところにあるらしい。「荷物を置いていったらどうか?」との提案もあったけど、たいした荷物は持ってないので、そのまま出発。
久しぶりの早朝歩きは気分上々。天気も上々。通学の小学生との朝の挨拶を楽しみつつ、山の中の小道を歩く。体が温まったころ木々の間から明石寺が見えてきた。爽やかな気分だ。
明石寺から戻る途中、愛媛県歴史博物館の案内発見。寄ってみたらなかなか大きな施設であった。でも残念ながら月曜日で休館。そのまま高野長英の隠れた家なんぞを見ながら、のんびり気分で大洲方面に歩き出す。
44番大宝寺へは大洲、内子へ向かい、内子からから松山方面へ行く国道から離れ、国道380号線で小田、久万高原に向かう。その久万高原に大宝寺はある。そこまで70キロ程度。最後は国道33号線にそって松山までは100キロ以上の長丁場。
週末に、「浮世の義理」的仕事があるため木曜日には帰らなければならない。どこまで行けるか不安だけれど、とりあえず歩き出す。途中、民間のお接待所で地元の爺さんと話をしたり、国道沿いの蒲鉾製造直売所で昼食用にジャコテンを買ったりしながらのんびり歩く。ほぼ、半年ぶりの四国遍路。冬の間に固まった体の節々が痛む、息が上がる。
蒲鉾店でジャコテン購入のおまけで貰った、揚げたての白ハンペン(大葉、たこ入り)を畑の横に腰を下ろし食べる。美味い!本場で本物の揚げたてはやっぱり美味しい。基本的に「練り物嫌い」の私だけど、今まで食べた「練り物」の中で最も美味しかったかもしれない。
大洲へ入る前、鳥坂峠(トサカ峠)を越えなければならない。国道はトンネルで抜けているけど、歩道がなくけっこう危険との情報のもある。国道から離れて杉木立の間の山道に入る。この地域の杉は元気にだ。スギ花粉撒き散らす赤茶けた杉の木はほとんど見ない。でも、スギ花粉の気配は感じる。マスクを着用しスギ花粉に備える。息が苦しい。ひたすら登る。登りつつ、スギ花粉に対抗する新しい呪文を考えた。
「南無大師遍照金剛、花粉退散」
くしゃみが出そうになるときこの言葉を発する。すると不思議にもくしゃみが収まる。
「ナムダイシヘンジョウコンゴー」「カーフンタイサン」
「ナムダイシヘンジョウコンゴー」「カーフンタイサン」
「ナムダイシヘンジョウコンゴー」「カーフンタイサン」
調子が出てきた。マスクをとり、吹いてくる風に向かっても
「ナムダイシヘンジョウコンゴー」「カーフンタイサン」。
これって、お大師様のご利益なのか・・・。とりあえずそういうことにしておこう。
花粉との戦いも納まり、大洲着は午後3時近い。今日は内子まで行きたかったけど、初日でもあるし、「今日のところはこのぐらいにしといてやる」と池野めだか風につぶやいた。たまたま見つけた酒屋で本日打ち上げ用地酒購入。街中の観光客用ベンチで一杯やろうと大休止。そこで買った地酒を注ぐために持参のシェラカップを探すも、見つからない。小さなザックの少ない装備だけどシェラカップは見つからない。ショックである。愛用のシェラカップ紛失もショックだけど、物をなくした自分自身が悲しい。これから年をとり、さらにいろいろ無くしていくのか?と、暗い気分になってしまった。
今日、内子まで行けないと明日からの予定がさらに苦しくなりそうだ。いろいろ検討した結果、素晴らしいアイディア発見。今から内子までJRに乗れば良い。シンプルなアイディア発見にに満足満足。
駅に向かえばまさに発車直前だった。そんな流れるような行動で内子着。駅横の観光案内で今日の宿も確保。この先の44番札所大宝寺で時間切れの場合の久万高原からのバス運行状況を調査するもよく分からない。ただ、大宝寺まではここから40キロていどあるらしい。
いろいろ考えたけど、やはりリスク回避のため今回の遍路は内子で終わり、明日は内子周辺を徘徊し、道後温泉で汗を流し、予定を一日早め帰還することにした。週末の「浮世の義理」的仕事をこなしたら、又くれば良い。18切符はまだ3枚残っている。再出撃の時間は十分ある。
その日の宿は民宿・シャロン。「狭い部屋ですが良いですか?」との話だったけど本当に狭かった。広さは二畳と三畳の間。すでに大きなマットと布団が敷いてある。その布団に腰を下ろさなければ座る場所もない。でも、シャロンは掃除も行き届き、けっこう快適な宿だった。下が立派なカウンターのある格調高い喫茶店。そこでコーヒーを頂きつつオヤジさんから聞いた内子の話はとても興味深いものだった。(2012.3.19/月)
●行動記録
7:30 行動開始
7:50 明石寺
12:15 鳥坂峠
15:06 JRで大洲から内子
●歩行距離
1.2キロ 旅館・松屋-明石寺
12.3キロ 明石寺-鳥坂峠
10.2キロ 鳥坂峠-大洲駅
合計(23.4キロ)
●主な支出
300円 明石寺納経
683円 ジャコテン5枚(おがた蒲鉾店)
260円 JR大洲-JR内子
4600円 宿泊(シャロン、コーヒー1杯)
380円(?) 地酒・きた美人300ML
2910円 夕食・吉長(鯛めし定食、酒2合、サザエつぼ焼き、枝豆)
【旅館松屋の朝食用座敷の床の間】
【こんな座敷でゆったり朝食。なかなか良い】
【旅館松屋の玄関】
【ちょっとした文化財かも】
【43番札所明石寺】
【高野長英が隠れた家】
【二宮敬作の離れ二階】
【一階が壊れたので下に下ろしたとか】
【一階が壊れたので下に下ろしたとか】
【たまたま出合った隣の家のオバチャンから聞いた】
【おがた蒲鉾店】
【卯之町から大洲へ向かう国道56号線沿い】
【サービスで頂いた揚げたて白ハンペンは美味かった】
【鳥坂峠への道】
【大洲に着いた】
【肱川越に臥龍山荘が見える】
【民宿シャロンは喫茶店の二階だ】
【吉長・鯛めし定食】
【熱いご飯、新鮮な鯛の刺身、卵を溶いた甘めのタレ】
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