当初、鉄輪温泉貸間旅館三泊の予定なるも、突然の寒波。強風に雪が舞う。あわよくば由布岳か鶴見岳に登ることをひそかに画策していたけど、にあまりの寒さに予定を一日繰り上げ、帰ることにする。帰りのフェリーは夕方7時35分。時間はたっぷりある。その間、別府の温泉をめぐることにする。
まずは、鉄輪温泉の観光案内所でどこに行くべきか相談する。どうせなら泉質の異なる温泉に入りたい。ただし歩いて行くことが可能なところが条件だ。鉄輪温泉の泉質はナトリウム塩化物泉。チョイと塩気と金気を感じる透明の湯だ。街の西の山手にある坊主地獄の近くに泥湯があると聞き、向かってみる。名前は鉱泥温泉。営業は午前中のみで午後からは療養専門の施設になるらしい。別府の泥湯と言えば健康保養センターが有名だが、鉱泥温泉の方が本格的な気配だ。
冷たい雪交じりの風に吹かれつつ鉱泥温泉到着。外観、内部ともに掃除が行き届き清潔な施設だ。受付のオバチャンは不在だった。「勝手に入ってくれ、代金は後で良い」との趣旨の看板が掲げられている。のんきな温泉だ。入浴料金800円。500円以上の温泉を避けるのが私の主義なのだが、体も冷え切っているので入ることにする。大きな露天風呂とその奥に屋根に覆われた泥湯がある。泥湯に入っていたら、オバチャンが現れた。
「今から掻き回すからちょっと出て欲しい」とのこと。大きな木の攪拌棒を操り、浴槽内を掻き回す。オバチャンに「ここは泥状のお湯が出ているのか?」聞いてみたところ、隣の坊主地獄から泥を運んで投入しているとのことだった。これまた海浜砂湯同様「あれっ?」て感じの泥湯だった。東北栗駒山近くの泥湯はほんまもんの泥湯だけどね・・・。
泥湯から出てもまだ時間はある。チョイと遠いけど柴石温泉に向かってみる。鉱泥温泉から山沿いの道をアップダウンを繰り返し北へ向かう。アゲンストの冷たい風に向かって歩く。はっきり言って辛い。「何でこんなことしてるのか?」との疑問もわいてくるけど、けっこう楽しい。柴石温泉はチョイと山の中に入った古くからある温泉だ。しかし市営の新しい施設が出来ている。入浴料金210円。ロッカー代100円。泉質は鉄輪温泉とほぼ同じ。ここには蒸し湯がある。けっこう高温のサウナ状態だ。ピラミッド状の天井を持つ穴倉的な小部屋に温泉の蒸気が充満し打ている。閉所恐怖症の私としてはあまり好みの状況ではないので早々に退散。でも、人気は高いようだ。
風呂から上がり、畳の部屋で持参のアンパンの昼食。ついでに一眠り。この旅に出て以来、神経が弛緩しているのか、しょっちゅう寝ているような気がする。でも、これが正しい温泉の楽しみ方かもしれない。柴石温泉を出て、海に向かって坂道を下る。出港まではまだまだ時間がある。船に乗る前に早めの夕食をとりたいと考えるも、どこにも食べるところが無い。今回の旅では美味いものを食ってないなー。
食事処を探しつつ、なんとなく港の方向に歩き続ける。突然、競輪場たどり着く。食事とは違うけど、競輪も面白そうだ。入り口には「開催中」との表示。とりあえず入ってみる。競輪は若い頃車券を買ったことがある。当時は埃っぽい人混みに予想屋の大声が響き、焼きソバとか串カツの匂いが充満していたものだ。そんな気分で入ってみたものの、雰囲気が違う。焼きソバ、串カツの気配も無く、観客はひたすらモニターを眺め、静かに車券の検討に没頭している。予想屋の大声も無い。
車券の購入もマークシート方式になっている。さらに競輪開催中と言うものの、その開催中の競輪は東京京王閣で開催され、ネットで観戦するものらしい。昨今のIT技術はギャンブル関係まで浸透している。これなら各地の競輪場のバンクは不要だよね。買い方も分からないので車券購入は断念し、とっとと退場。
競輪場を出るとさらに腹が減ってきた。しかし店は無い。風は冷たい。はっきり言って辛い。どこへ行っても寒い。海岸線は特に風が強い。寒さと空腹に耐え切れず、たまたま見つけた公衆浴場「餅が浜温泉」。入浴料金100円。ロッカーは無いので100円ポッキリ。受付のオバチャン、先客ともに無く、勝手に入る。暖かい温泉が冷えた体に滲み渡る。今回の旅に中で一番気持ちよかった温泉だった。餅が浜温泉を出たとき、開いているラーメン屋発見。やっと焼き餃子、鉄板チャーシュー、ビール、ラーメンにありついた。今回の旅の中でもっとも美味しい食事だった。食事も温泉もその快感は今ある自分自身の状況によることを実感。まさに色即是空、空即是色。ナマンダブナマンダブ。(2013.1.26)
◆行動記録
8:30 双葉荘発
宿代 7655円(二泊)
10:00 鉱泥温泉(800円)
12:30 柴石温泉(310円)
16:00 餅が浜温泉(100円)
16:45 ラーメン他(1960円)
17:35 フェリー出発
8480円(シルバー割引20%オフ)
【鉱泥温泉、隣の坊主地獄から運んだ泥を投入している。入浴料:800円】
【柴石温泉。入浴料金210円、ロッカー代100円、蒸し風呂あり、畳の休憩部屋もある、地元のオッチャンが将棋を指していた】
【別府の海岸はほとんど公園になっている、遠景は高崎山、この日は寒かった、この寒さの中貝を掘っている人がいた、聞けばニシ貝を採っているとか、ここ数年、アサリは姿が無いとも言っていた】
【あまりの寒さに飛び込んだ餅が浜温泉、入浴料100円】
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